オペナースのみなさんお疲れ様です。オペナースいもてぃです。
今回は、オペ中ちょいちょい出てくる”止血剤”について知識の共有をしていこうと思います。
止血剤って、けっこういろんな種類がありますよね。実際、執刀医から言われたものを出して使うと思いますが、「どのように作用して止血しているの?」と思ったことはありませんか?
この記事を読んであなたも止血作用や用途、器械出し看護師・外回り看護師の動きも一緒におさえておきましょう!
まず、本題に行く前に・・・
止血剤のはなしに行く前に止血に関する知識をおさえておこうと思います。
登場するワード
- フィブリノゲン:血液凝固因子の一つ(第Ⅰ因子)
- フィブリン:フィブリノゲンが分解され活性化されたもの
- トロンビン:血液凝固にかかわる酵素、フィブリノゲンをフィブリンに変換する
- 一次止血:血小板が出血部位で凝集塊を作り、止血すること、脆く不安定
- 二次止血:一次止血の後に、フィブリンが一次止血の周囲を覆い、強固に止血すること
【出血してから止血が完了するまでのながれ】
①血管壁が損傷すると、出血を起こします。
②出血を抑えるために、損傷した血管周囲は収縮し、血小板が血管壁に粘着していきます。
③血小板が粘着し集まると出血は収まります。この状態を一次止血といいます。
④一次止血後、血管壁を修復し、完全に止血しようと血液中のフィブリノゲンがトロンビンの作用でフィブリンとなりそのフィブリンが出血箇所に集まり一塊になります。この状態を二次止血といいます。
⑤最終的に一塊になったフィブリンが溶解され、血管壁の修復が完了します。
この自然に体が止血しようとしている作用を人的に促し、止血を行うために止血剤を使います。
止血剤別の作用
では、5つの止血剤(サージセル®インテグラン®フロシール®ベリプラストP®)がどのように作用して止血しているかを見ていきましょう。
サージセル®
酸化セルロース
サージセル®は、酸化セルロースが主成分となっています。セルロースは、炭水化物の一種で食物繊維の主成分としています。そのセルロースを酸化してガーゼや綿状にしています。また、体内で吸収される止血剤です。
作用:酸化セルロースは、ヘモグロビンとひっつき、フィブリン塊を作ることで一次止血をします。
つまり、酸化セルロースが血液に触れることで、フィブリン塊を作り出し、二次止血を促して出血を抑えているんだね。
形状として、綿タイプ、シートタイプ、ガーゼタイプ、パウダータイプがあります。
器械出し看護師の動き
事前に止血剤の在庫を確認しておきましょう。
術中は、術野で執刀医が、使用しやすいように準備をします。
- 綿タイプ:パッケージから出すと一塊になっているので1枚1枚薄く剥がしていきます。
9枚くらいに剥がすことができます。出血点の範囲で必要な量をとって
渡しましょう。綿上なので濡らさないように注意しましょう。 - シート、ガーゼタイプ:出血範囲の大きさでカットします。2×2cmや4×4cmなど
- パウダータイプ:パッケージから取り出し、執刀医に渡す前にロックを解除して
渡しましょう。戻ってきたらロックし、保管します。
外回り看護師の動き
術野を定期的に観察し、出血が起きた場合に動けるようにしておきましょう。
執刀医や術式によって止血剤の形状の好みや使用しやすさを考慮して、執刀医の指示があればすぐに清潔野に出せるように準備しておきましょう。
インテグラン® BDアビテン®
コラーゲン製剤
ウシの真皮由来のコラーゲンを原材料にしています。
作用:血液とコラーゲンが接触すると血小板がコラーゲンと結合し、活性化されます。
活性化された血小板がフィブリンを形成し、血液が凝固され一次止血をします。
この商品の場合は、コラーゲンの止血効果を利用しています。商品に含まれたコラーゲンが血液に触れることで血小板と反応してフィブリン形成をし、止血します。
形状は、フラワータイプ、綿タイプ、シートタイプがあります。
器械出し看護師の動き
事前に止血剤の在庫を確認しておきましょう。
術中は、術野で執刀医が、使用しやすいように準備をします。
- フラワータイプ:必要量を乾燥した無鉤セッシで取り出し、執刀医に渡します。
- 綿タイプ:必要量を乾燥した無鉤セッシまたは手で割いて、執刀医に渡します。
- シートタイプ:必要な大きさにカットし、執刀医に渡します。
外回り看護師の動き
術野を定期的に観察し、出血が起きた場合に動けるようにしておきましょう。
執刀医や術式によって止血剤の形状の好みや使用しやすさを考慮して、執刀医の指示があればすぐに清潔野に出せるように準備しておきましょう。
フロシール® サージフロー®
トロンビン製剤
ゼラチンとトロンビン溶液を混合して使用する止血剤です。
特徴としてトロンビン溶液をゼラチンと混合することでペースト状なり、出血部に付着させることができます。
また、体内吸収性があります。
サージフロー®は、2℃~25℃の保管になっています。
作用:トロンビン溶液が、血中のフィブリノゲンに作用し、フィブリンにすることで二次止血をします。
これは、基本でもはなしたようにトロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに変化させる作用を利用して、二次止血を促すようにします。
ゼラチンは動物由来で、フロシール®は、ウシ真皮由来。サージフロー®は、ブタ由来。
トロンビンは、ヒト血清アルブミンから乾燥ヒトトロンビンを精製して使用します。
器械出し看護師の動き
事前に止血剤の在庫を確認しておきましょう。
また、溶解手順を事前に確認しておきましょう。
執刀医から指示された後、フロシール®およびサージフロー®の溶解手順に沿って薬剤を混合させましょう。
ゼラチンと混合させた後は、2つとも最大8時間までに使用してください。
外回り看護師の動き
ヒト血液由来なため、術前に特定生物由来製剤の同意書があることを確認しましょう。
また、薬事法68条の9(記録の作成、保管)より製品名、製品番号(ロット番号)、使用した患者の氏名、住所、使用した日付けを記録し、20年間保管しなければなりません。
術野を定期的に観察し、出血が起きた場合に動けるようにしておきましょう。
フロシール®は、トロンビン液を溶解手順に沿って溶解し、清潔野のカップに入れましょう。
サージフロー®は、物品を器械出し看護師に清潔に渡しましょう。
各溶解手順を事前に確認しておきましょう。
タコシール®
シート状フィブリン接着剤
スポンジ状のコラーゲンシートにヒトフィブリノゲン及びヒトトロンビンを固着させたシート。
保管方法は冷所保管になっています。
作用:出血部に圧着させることで、シート中の成分が溶け出し、トロンビンがフィブリノゲンと反応し、フィブリンとなり組織を接着、閉鎖し、二次止血をします。さらに、コラーゲンが、フィブリン塊を補強し、止血効果を高めています。
これもシートについているトロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに変化させ、出血箇所の二次止血を促すことを利用しています。
ちなみに…タコシール®の”タコ(Tacho)”は、ギリシャ語のTaxos(タキス)のスピードを語源にしていて、効果が速やかなことを表現してタコシールと名付けられています。
コローゲンは、ウマ由来、フィブリノゲンとトロンビンはヒト血液由来です。
器械出し看護師の動き
事前に止血剤の在庫を確認しておきましょう。
術中は、術野で執刀医が、使用しやすいように準備をします。
そのままの大きさで使用する場合や出血点、補強したい場所の範囲に応じてカットします。
黄色になっている面に、有効成分が付着しているので表裏に注意します。
外回り看護師の動き
ヒト血液由来なため、術前に特定生物由来製剤の同意書があることを確認しましょう。
また、薬事法68条の9(記録の作成、保管)より製品名、製品番号(ロット番号)、使用した患者の氏名、住所、使用した日付けを記録し、20年間保管しなければなりません。
術野を定期的に観察し、出血が起きた場合や組織の補強を必要とする場合に動けるようにしておきましょう。
執刀医の指示があれば、清潔野に出せるように準備しておきましょう。
ベリプラストP®
液状フィブリン接着剤
A液とB液に分かれていて、2つをあわせることで創部の止血目的や消化管、肺の縫合部の補強などに使用されます。
保管方法は2~8℃の冷所保管になっています。
A液は、ヒト由来のフィブリノゲン・凝固第Ⅷ因子をアプロチニン液で溶解させます。
B液は、ヒトトロンビンを塩化カルシウム液で溶解させます。
作用:A液のフィブリンとB液のトロンビンが反応し、フィブリンを形成して、A液の凝固第Ⅷ因子とB液のカルシウムの作用でより安定したフィブリン塊になり、組織に接着し、二次止血をします。
これもフィブリンを形成することを利用しています。この商品のメリットは、液状で圧縮空気でスプレー噴霧できるため少量でも広範囲に薬液を撒くことができるところです。
フィブリノゲンや凝固因子、トロンビンは、ヒト由来のもので、アプロチニンはウシ由来です。
器械出し看護師の動き
事前に止血剤の在庫を確認しておきましょう。
A液、B液を外回り看護師から受け取り、手順に沿ってセッティングをしましょう。セッティング中にA・B液を混合させてしまうとノズルの先端が詰まってしまうため、注意しましょう。
A・B液を術野で使用するときは、滴下する方法と圧縮空気で噴霧する方法があるため、術式に応じて準備を行いましょう。また、B液のみを先に術野で補強材などに滴下し、あとでA液を滴下して混合させる方法もあるので事前に確認しましょう。
外回り看護師の動き
ヒト血液由来なため、術前に特定生物由来製剤の同意書があることを確認しましょう。
また、薬事法68条の9(記録の作成、保管)より製品名、製品番号(ロット番号)、使用した患者の氏名、住所、使用した日付けを記録し、20年間保管しなければなりません。
事前に止血剤の在庫を確認しておきましょう。
手順に沿って、A液、B液を溶解させましょう。A液は、簡単に溶解しますが、B液のトロンビン溶液は、冷所から出したすぐは、溶解しにくいため、ダマがなくなるまでしっかり溶解しましょう。
事前に使用することが分かっていれば、室温に戻しておくと溶解しやすいです。
スプレー噴霧する場合、専用のエアー調整器(レギュレーター:スプレー用減圧弁)があります。それを空気のアウトレットに接続し、圧を調整しましょう。
まとめ
今回、説明した内容を簡単に表にまとめてみました。
商品名 | 止血剤 | 作用 | 特定生物由来製剤同意書 |
---|---|---|---|
サージセル® | 酸化セルロース | 酸化セルロースとヘモグロビンは親和性があり、フィブリン塊を作り一次止血をする | 不要 |
インテグラン® BDアビテン® | コラーゲン製剤 | 出血面にコラーゲンが、接触すると血小板がコラーゲンと結合。活性化された血小板がフィブリンを形成し、凝固され一次止血をする | 不要 |
フロシール® サージフロー® | トロンビン製剤 | ゼラチンと混じっているトロンビンが、血中フィブリノゲンに作用し、フィブリンになることで二次止血をする | 必要 |
タコシール® | シート状フィブリン接着剤 | シートのフィブリノゲンがトロンビンと反応し、フィブリンとなり組織を接着、閉鎖し、二次止血をする | 必要 |
ベリプラストP® | 液状フィブリン接着剤 | A液のフィブリンとB液のトロンビンが反応し、フィブリンを形成して、A液の凝固第Ⅷ因子とB液のカルシウムの作用でより安定したフィブリン塊になり、組織に接着し、二次止血をする | 必要 |
いろいろな止血剤があり、一つ一つ止血の作用が違うことがわかったと思います。さらに止血剤の形状でどのように使用すれば、術野で使用しやすいかを考えて、準備することで出血時に無駄のないスムーズな対応ができると思います。
見ていただきありがとうございました。皆さんで情報共有してよりよいオペ室を築いていきましょう。